駐日キューバ大使ヒセラ・ガルシア氏の講演
キューバ大使の講演内容の詳細 (5月21日)
キューバはいま、どういう状況にあるのか
1.キューバの現状
わが国キューバは非常に困難な状況にあります。米国の経済封鎖が最近大きく強化され、それをもとに一連の不利な状況が積み重なった結果です。とくにトランプ大統領が 登場した2019年以降、対キューバ制裁には243件もの追加措置が導入され、経済封鎖は段階を画して強化されました。それは燃料の遮断をはじめ、キューバへの物資供給の一切を完全に断ち切ることを狙ったものです。キューバに対する封鎖措置は容赦ないものです。その攻撃対象は医療や医薬品の分野にも及んでいます。
思い出されるのは、新型コロナの流行時、キューバには医療物資や人口呼吸器の輸入さえも許されなかったことです。勿論、酸素ボンベも手に入らない。世界的パンデミックという最も厳しい災害が襲ったさいも米国は封鎖を弱めるどころか、むしろそれに乗じて制裁を強化したものです。
このことは、キューバに対する帝国主義政策の実施における最悪の出来事の一つとして、わが国の国民の記憶から決して消えることはないでしょう。
今年1月29日、米国は大統領令を発動し、自国の領土、企業、またはビジネス組織からキューバへ燃料を輸出するすべての国に対し、関税による報復措置をとると脅かすという、追加的かつ異例の措置を講じました。完全なエネルギー封鎖でした。 これは戦争行為です。海上封鎖に相当し、国際法上、戦争行為として規定されている行為にあたります。
これは、わが国の国民、そしてキューバのすべての家庭に甚大な被害をもたらす行為であり、わが国の経済にも極めて深刻な影響を及ぼすものです。米軍がカリブ海やその周辺海域で外国の石油タンカーを追跡、拿捕、押収し始めた時から、すでにその影響は現れ始めていました。それはキューバに石油を届けさせないことを目的に行われたものだからです。
過去4か月間で、キューバに到着した燃料輸送船は1隻のみです。エネルギーの安定供給を維持するためには、キューバでは毎月少なくとも8隻が必要とされています。これに伴い、日常生活のあらゆる分野で困難が生じています。水道やごみ収集など、あらゆる公共サービスにも影響が出ています。食料や医薬品が確保できた場合でも、燃料不足のため、必要な場所に効率的かつ迅速に輸送できないこともあります。 医療制度も深刻な打撃を受けています。今わが国では、手術待ちの患者が9万6,000人以上おり、その中には1万1,000人以上の子供が含まれています。
2.新たな侵略の口実
毎日のように新たな措置を発令し、制裁をさらに強化しています。もはや何が最新なのか分からなくなっているのですが、5月1日に発令された大統領令では「二次的制裁」へと拡大しました。あらゆる団体、個人に対して、それらの個人や団体が米国内におこなう経済活動の利害が、わが国とはなんら関係もないのにも関わらず、「キューバに対する行為」を行ったという理由だけで、米国内の資産が没収・凍結される恐れが生まれています。これはわが国に対する経済制裁の第三国適用において極めて攻撃的であり前例のない措置です。
なんらの正当な理由も何もないにもかかわらず、米国政府は、キューバ国民に対する容赦ない経済戦争をしかけ、将来的には軍事侵略を正当化するために、日々、虚偽の証拠をでっち上げています。将来起こりうるかもしれない軍事侵略のために、さまざまな嘘の報道がなされていることを自覚しなければならない事態です。それはますます荒唐無稽なものとなっています。米国こそが侵略国であり、キューバは侵略を受けた国です。しかし正当防衛の権利はあります。
昨日、もう一つキューバに対する非難が行われました。すでに現役を退いているキューバ革命の指導者であるラウル・カストロ元革命軍将軍に対して、1996年2月にキューバ領空で起きた米軍機撃墜事件を理由に提訴するというニュースです。何の法的根拠もないことです。この事件は、1994年から1996年にかけて2年にわたり、米国に拠点を置く「救援の兄弟」(亡命者支援の民間テロ組織)の小型飛行機がキューバの領空を頻繁に侵犯していました。キューバ政府は正式に抗議を申し入れ、警告して来ました。25回以上も。当時の米国大統領にも直接、キューバ領空を侵犯する挑発行為だとの警告をしました。そして、国際民間航空機関に提訴し、この行為を続ければ、キューバ国民の安全を脅かし、紛争を誘発するものになるという警告を送り続けました。しかし、米国政府は何の行動も行いませんでした。領空侵犯は続けられました。
ついに、キューバは正当な防衛の措置として、領空侵犯してきた小型飛行機を撃墜しました。そういう事件であったにも関わらず、米国はラウル・カストロを提訴しました。
ラウル・カストロは、キューバ革命に多大な貢献をした指導者であり、コロンビアでも政府と武装勢力ゲリラとの歴史的な和平協定締結に尽力し、ラテンアメリカ「平和地帯宣言」(議長国キューバ)の制定に尽くした人物です。
また、宗教対立の面でも、ローマ教皇がキューバを訪問した際(2016年)、カトリックと対立関係にあったロシア聖教総主教との会談を実現させて歴史的な和解に繋げた人物です。わが国にとっても世界にとっても重大な貢献をした人物です。このようなニュースが伝わったのは昨日ですが、キューバへの軍事侵略を正当化する口実の積み上げではないかという心配をしています。
3.キューバは抵抗する
石油を絶たれたキューバは緊急事態にありますが、様々な部門を再編して少ない石油で国を動かせるよう最大限の努力と工夫をしています。在宅勤務とか一般教育も大学教育も対面授業の割合を減らし、遠隔教育の技術を取り入れています。最も影響を受けやすい脆弱な人々を守ることを最優先課題としています。そのようなわが国の社会体制は世界でも類を見ないものと思います。これほどの厳しい経済包囲網、エネルギー包囲網に対しても工夫しながら国として立ち向かうことを可能にしています。非常に困難な状況下にありますが、人々は働き、暮らし、秩序を維持し、自分たち努力によってこの状況に対処する道を模索し続けています。
現在、国内でとれる石油によって火力発電によって電力供給を行っています。小さな分散型発電設備で1000メガワットを超える発電も行っていましたが、これは燃料不足のため4ヶ月間稼働出来ずにいます。そのため国のエネルギー構成を、太陽光発電を中心にした再生可能エネルギーへ転換する努力を進めています。再生可能エネルギーの普及率は、3%から10%にまで拡大しています。
4.主権を守る
この困難な数ヶ月間、キューバの国民は革命と社会主義体制への支持を力強く示してきました。ベネズエラへの侵攻が行われた直後に実施された「闘う人民の行進」、米国のベネズエラ侵攻で犠牲になったキューバ人32人の遺体を迎えるときの大追悼集会で、ブラヤ・ヒロン(1961年に米CIA支援部隊が上陸した激戦地)の勝利を記念する行事でも、そして全国各地で行われたメーデー集会でも米国による多面的な侵略に対するキューバ国民の抵抗精神と封鎖解除を要求する意志表明がされました。5月1日のメーデーでは首都ハバナで50万人以上、全国津々浦々で500万人以上の国民が団結、抵抗、革命への献身、そして、必要なときには武器をもって戦う決意を力強く示しました。それは歴史的かつ活気に満ちた一日であり、アメリカ帝国主義にそのことをしっかりと認識させたと私たちは期待しています。
そして、封鎖と戦争に反対する国民的キャンペーン「祖国のための署名」には、全人口の半分以上の623万人以上のキューバ人が署名しました。そして、いまは「キューバのための署名」というのが始まっています。キューバ労働者連盟が呼びかけたもので、世界のすべての人たちにオンラインで署名を呼びかけています。
ここに断言することが出来るのですが、私たちは、可能な限り最大の社会的正義を実現し、それを守り、最大限に擁護し、その持続可能性を確保するという道を歩み続けます。私たちは今後も、社会主義建設のプロセスを絶えず改善するという決意のもと、戦い、夢を描き続けてまいります。可能な限り最大の社会正義を実現し、それを守り、最大限に擁護し、その持続可能性を確保するという道を、これからも歩み続けていきます。
5.対米関係
私達は米国と互いに尊重し合う関係を築きたいと望んでおり、米国社会の様々な分野とキューバ社会との間には、歴史的に広範かつ円滑なつながりが存在しています。キューバ政府はこれを後押しし、促進しています。それを妨げたり、禁止したりするのではなく両国の絆を強めていきたいと望んでいます。
それを妨害し、障害を作り出しているのは米国政府側にあり、米国の市民は、政府からの許可がない限り、キューバへの輸出も、キューバからの輸入も、キューバへの訪問もできない。キューバへの留学も禁止されています。
最近、キューバ政府高官が、米国政府の代表者と会談を行い、対話を通じて二国間の対立の解決策を模索しましたが、こうした意見交換は、平等、主権の尊重、および互恵の原則に基づいて行われています。
キューバはずっと以前から、米国と敬意と責任を持って対話する用意があるという立場を貫いてきました。これは私達が一貫して維持してきた立場です。
今、米国側が敵対的な姿勢を強めたことで、その条件は厳しさを増していますが、私たちは引き続きこの立場を貫きます。
私たちは、キューバの政治体制は交渉の対象ではないことを断固として確認するものです。当然のことながら、大統領も、キューバのいかなる指導者の地位も、米国や他のいかなる政府との交渉でも、対象とはなりません。これは、キューバ人自身の尊厳に関わることだからです。
米国政府の最高指導者たちによる絶え間ない攻撃や脅威が続く中で、交渉が前向きな成果をもたらすとは期待できません。「次はキューバだ」という絶え間ない脅威は、交渉に影を落とし、その進展を妨げる要因となっています。
さらに、この攻撃には、キューバ国民に対する「認知戦争」を展開するための、数億ドル規模の政府プログラムも伴っています。その目的は、誤った情報を流布し、人々の判断を混乱させ、動員力を弱め、愛国心を弱め、キューバ人の感情を傷つけ、尊厳を損なうことに目的があります。
こうした敵対的な行動にもかかわらず、米国の国民の大多数はキューバへの攻撃に反対しており、わが国が彼らにとって何の脅威にもならないことを理解しています。
6.国際連帯
こうした困難な状況下において、私達は改めて、キューバが孤立していないことを確認しています。私たちは、世界各地の多くの友人たちからメッセージを受け取っています。各国政府から友好団体に至るまで、米国の犯罪的な政策を糾弾し、それぞれの可能性に応じてキューバを組織的に支援してくれています。これは、たとえ各国政府が米国による制裁を恐れて身動きできない状況にあっても、キューバが数十年にわたり示してきた連帯と協力が、世界中に深い足跡を残していることの証でもあると思います。
ここ数ヶ月、多くの支援者の友人が、何らかの形でキューバ国民を支援するために我が国を訪れてくれました。彼らの貢献は、物質的な面だけでなく、米国が押し付けるメディアによる封鎖を打ち破る上でも、非常に貴重で重要なものです。
日本の友人の皆様からも貴重な支援をいただいています。友好団体、企業、個人の皆様が大使館に援助を申し入れてくださり、カンパに協力してくださり、封鎖に対する反対の声明や談話を出してくださっています。心よりお礼申しあげます。
最近、日本政府からキューバの病院10か所のソーラーシステム、金額にして10億円を提供してくれるという発表がありました。
7.結びに
キューバは責任ある行動をとっており、今後もそうしていきます。私たちは、直接的な軍事攻撃を含むあらゆる事態に備えていますが、そのような危険な冒険に乗り出す前に、理性と良識が勝つことを信じています。キューバは責任ある行動を取り続けていきます。
わが国に対する攻撃を正当化できる理由は何一つありません。キューバの国民に対する集団的懲罰、すなわち、「飢えと絶望によって滅亡させる」というような集団的懲罰を正当化できることは出来ません。
キューバは誰に対しても脅威を与えません。キューバは、抵抗し続けています。皆さんが支えてくださっているおかげで、孤立していないからです。友好連帯組織の方々や個人の皆様が支えてくださっているおかげで、孤立せずに抵抗し続けることが出来ています。キューバは自らを守ります、思想をもって守ります、そして必要な時には武器をもって守ります。
