キューバはいかにしてコロナを封じ込めたのか 経済制裁の中で発達した医療システムと独自の医薬品が奏効
知られざる医療先進国キューバの取組み
カリブ海に浮かぶ小さな島国、キューバ。あのカストロ兄弟とチェ・ゲバラが率いたキューバ革命以降、社会主義国として独自の道を歩んできた。キューバといえば、やはり「ラム酒、タバコ、チェ・ゲバラ」。地元紙も自らそう報じるほどで、日本でもこれらのイメージがいまだに根強い。さらに革命以来の軋轢から、米国を中心とした一部の国々より経済制裁を受けており、医療物資を含む生活必需品も慢性的に不足している状況だ。
そんなキューバが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の封じ込めに成功しつつある。キューバ保健省(MINSAP)の統計データによると6月17日現在、キューバ国内での新型コロナウイルス感染症数は2,295人、死者は累計85人。6月に入ってからの新規発症者は1日あたり平均12.4人(2020年6月1日~6月17日)となっており、人口あたりの累計感染者数の推移を見ても、多くの医療先進諸国の数値を下回っている。しかもキューバは、世界の感染者数の1/3を占める米国の隣国であるにも関わらずだ。
米国からの長期経済制裁という不利な条件の中、キューバはいかにして、コロナウイルスと戦ったのか。駐日キューバ大使館の科学技術担当参事官ラモン・ヌニェスさんに、その実態を聞いた。
今回のコロナヴィールス禍では、この国の基本が、人間尊重・命を守る事に徹底していることを痛感しています。
キューバにお世話になって18年半になります。自然が美しく気候が良く、健康的な暮らしをさせてもらっています。今回のコロナヴィールス禍では、この国の基本が、人間尊重・命を守る事に徹底していることを痛感しています。
健康は人権~生存権・人権の保障
コロナヴィールスが世界に広がり始めた2月末、キューバ政府は、「呼吸器・気管支などに持病・既往症のある人は外出を控えてください」「咳・気分の悪さ・発熱など、少しでも異常を感じたら直ぐに医療機関に行って下さい、いつでも診療できますので早めに受診して下さい」と呼びかけました。
ケイタイを契約しているCUBASELクーバセルから、
「保健省からの通達:発熱・咳・気分の悪さなどを感じたら直ぐに医療機関にかかって下さい。石鹸やアルコールで手洗いとうがいを徹底して下さい」と度々メールがあり、注意を促してくれます。
キューバはテロリズムと政治的操作を糾弾する
キューバ共和国外務省声明
「キューバはテロリズムと政治的操作を糾弾する」
米国務省は2020年5月13日、テロ対策に十分協力していないとみなす国々のリストにキューバを再度追加したと発表した。この中傷的な措置に対し、ミゲル・ディアスカネル大統領は強い拒絶を示した。キューバ外務省としては断固たる拒否を表明するものである。
同リストは単独的かつ恣意的なものであり、根拠もなければ国際的な権威や支持も伴わない。これは周知の通り、米国政府が下す傲岸な決定において、その意向に従わない国々を中傷したり圧力をかける目的のためだけに使用されるものだ。
米国政府は主な根拠として、コロンビア民族解放軍(ELN)の和平交渉団メンバーがキューバ国内に滞在していることを挙げた。
広く周知の通り、ELNの和平交渉団がキューバにいるのはエクアドルが仲介役を突然降りた後、コロンビア政府とELNの依頼を受けて和平プロセスが2018年5月、ハバナに移ったためである。
米国のキューバ攻撃に対する抗議声明
昨年12月に中国で確認された新型コロナウイルスによる感染症は、瞬く間に世界に蔓延し、多くの人々の生命を奪い、人々の生活を根こそぎ破壊し続けています。コロナウイルスは、狡猾で狂暴な悪魔です。人間の体内に身を潜め、隙を伺い、突如として狂暴な姿を現します。しかも、コロナウイルスにとっては、国境や社会体制の相違は何の意味も持ちません。したがって、コロナウイルスと戦うためには、私たちは理性レベルを最高度に引き上げるとともに、国家や社会体制の相違を超えて力を結集しなければなりません。情報の共有、専門知識や経験の共有、国家間の交通規制、医療協力、医療機器や医薬品の相互提供、ワクチンの共同開発といった国際協調がなければ、桁違いの破壊力を持つコロナウイルスには太刀打ちできないということです。
にもかかわらず、トランプ政権はコロナウイルスの破壊力を軽視し、科学的な知見を排除し、しかも国際協調をことごとく拒否し続けています。根底には、自国第一主義が横たわっています。自国第一主義は、国境や社会体制の相違を前提にし、さらに自然環境などをめぐる国際協調を拒否する姿勢と表裏一体となっています。しかし、このような政治姿勢は、コロナウイルスを前にしては、もはや無力な孤立主義に過ぎません。
米国務省はキューバ大使館へのテロ攻撃について、共犯的沈黙を守る
駐日キューバ大使館発表
2020年5月11日
「米国務省はキューバ大使館へのテロ攻撃について、共犯的沈黙を守る」
去る4月30日未明、在ワシントンのキューバ大使館を標的としたテロ攻撃が発生した。キューバ出身で在米の人物が一人、大使館の建物を自動小銃で攻撃し、30発以上を撃ち込んだ。
キューバ政府は米国政府に対し、徹底かつ迅速な捜査及び厳罰を要求した。同時に「外交関係に関するウィーン条約」(1961年)に則り、我が国の外交使節団への安全措置と安全の保障を要求した。
攻撃の発生当時、現場には10人ほどの外交官と職員がおり深刻な危険にさらされたが、幸いにしていずれにも怪我はなかった。
今日まで米国務省、米国政府のいずれも、事件を糾弾する正式な声明を発表しておらず、これは共犯的沈黙として解釈が可能である。




